埼玉・千葉連続通り魔事件(2011)について

2020年11月20日、埼玉県三郷市鷹野4丁目の自宅に硫黄約45キロを貯蔵し、危険物取扱基準に反したとして、埼玉・茨城の両県警は三郷市火災予防条例違反の容疑で、無職・岡庭由征容疑者(25)を逮捕した。同容疑者が危険な薬品や刃物を所持していると茨城県警から情報提供があり、2日に合同捜査班を設置し、19日朝から家宅捜索を行っていた。「保管していたことは間違いない」と容疑について認めているという。

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硫黄は消防法で危険物第2類(可燃性固体)に分類され、指定数量は100キログラム未満と定められており、粉塵爆発を起こす可能性があるほか、鉄と化学反応させると硫化水素が発生する。それと聞くと「危険だ」「なぜこんな大量に」と訝しむ向きもあるかもしれないが、ブルーベリー等の酸性を好む農作物向けの土壌改良剤として一般的に用いられるもので、もちろん市販されている。その硫黄を貯蔵保管していた自宅1階倉庫が、三郷市火災予防条例の定める基準を満たしていないという名目で逮捕された。たしかに違法所持には当たるが、全ての農家が土壌改良剤を厳密に管理しているかといえば納屋に大量に積みっぱなしだったり、タバコを吸いながら取り扱ったりという実情も少なくなかろうと思う。何を言わんとしているかというと、「硫黄45キロ」は県を跨いで合同捜査する類の違反行為とは考えがたく、余罪を追及するための「別件逮捕」ではないかとする見方が強い。

gendai.ismedia.jp

上の『週刊現代』2020年12月12・19日号リンク記事では、全国紙記者から次のような情報がもたらされている。

「実は両県警は、A容疑者を、昨年、茨城で起きたある重大殺傷事件の重要参考人と見ているのです。

当局は、A容疑者が事件当日に現場周辺にいたというGPS記録を持っているようですが、犯行に繋がる直接証拠がない。それで別件で逮捕し、自供を引き出そうとしたのです」

2019年に「茨城で起きたある重大殺傷事件」とはなにか。

www.pref.ibaraki.jp

記事の内容に照らし合わせてみると、茨城県警が公表する2019年の未解決凶悪事件に該当するもので、地理的な要因から察するに9月に起きた「境町大字若林地内における殺傷事件」、小林さん一家4人が被害に遭った“ポツンと一軒家”事件が当てはまる(他5つの掲載事件は茨城県央部の事案であり埼玉県三郷市からはやや距離がある)。それでも埼玉県三郷市鷹野から茨城県境町の現場までおよそ37km、車で約50分ほどかかり、生活圏とは言いがたい距離である。はたして両事件に関連はあるのか、続報が待たれていた事件だっただけに注目してみたい。

sumiretanpopoaoibara.hatenablog.com

尚、本稿執筆時点(12月23日現在)で両事件の関連は認められておらず、もしかすると茨城県警の捜査網にかかっただけで、実際には岡庭容疑者が境町の事件に一切関与していない可能性はある。ここでは参考までに、同容疑者が過去に埼玉・千葉両県で起こした連続通り魔事件について振り返ってみたい。

 

 

■事件の概要

2011年11月18日17時過ぎ、埼玉県三郷市鷹野の市道で、帰宅途中の市立中学3年の女子生徒(14)が背後から刃物で切りつけられ、右顎下に約5cm、深さ約10cmの頸動脈に達する深い切り傷を負った。帰宅途中の男性が発見し119番通報。女子生徒は約10日にわたって入院。現場近くの会社の防犯カメラに自転車に乗った男の姿が映っていた。

同年12月1日、三郷市の事件現場から約2km離れた千葉県松戸市栄町西3の路上で、下校途中の小学2年生の女児が転倒したところを胸や右わき腹、右腕など6か所を刃物で刺され、一部肺近くに達する全治10日の怪我を負った。女児は数百メートル離れた自宅まで泣きながら帰宅し、母親が通報。黒っぽい上下の服とキャップ帽子を身につけた若い男性が自転車で逃走したとの目撃情報が寄せられた。

12月5日17時過ぎ、三郷市高州の路上で自転車に乗っていた通信制高校2年・岡庭某(当時16)を警官が職務質問したところ、バッグに未使用の折り畳みナイフ(刃渡り15cm)と鉈(刃渡り17cm)を所持していたため、銃刀法違反容疑で現行犯逮捕。三郷での事件後、「ナイフを持ってうろついている人がいる」「校内にナイフを持ち込んでいる生徒がいる」等の情報が寄せられたことから、捜査線上に男子生徒が浮上し警戒を強めていた。調べに対し、「歩いている人を誰でもいいから殺そうと思った」「女性を狙った」と上記2件の犯行について認め、さらに「三郷市松戸市で三十件ほど放火した」とも供述。殺人未遂2件、自動車や倉庫など非現住建造物放火6件、動物愛護法違反2件など合わせて13件の罪に問われた。

(※同時期の12月2日15時50分頃、上記の現場からおよそ10km離れた千葉県柏市の路上で、塾帰りの小学4年女児と2年の弟が背後にカッターナイフを持った男が無言で立っているのに気づき、姉弟が走って逃走する事案が発生。若い男性、黒づくめの服装という目撃談から同一犯かと見られたが、岡庭は関与を否定した。その後、県外でも類似犯ともとれる事案が確認されており、各地で部活動休止、集団下校措置などが相次いだ。)

  

■事件までの生い立ち

地元では名士とされる岡庭家の長男に生まれ、両親と弟の4人暮らし。父親は建材を扱う会社を経営しており、地元消防団を取り仕切る有力者で、親類には代議士もいる。同級生らによれば「特に目立つことはないが明るい性格」とされるが、「小学校高学年のときは、虫とか結構殺していた」という。中学の卒業アルバムでは、一人だけカメラから顔を背けて写っており、将来の夢を「大学進学」、尊敬する人や好きな言葉を書く欄に「ないです」と記入していた。

近隣住民によれば「家族仲は良かった」とされ、幼馴染の証言では「どちらかというと文科系の顔。おばあちゃんがすごくかわいがっていた」という。逮捕を知った祖母は「2,3日前に会ったときは、普通の子ども、普通の子ですよ。こういう風な事件を起こしているなんて夢にも思っていませんでした」「ただただ、びっくりです。被害者の女の子、おっかない思いしたんじゃないかと思うと、全く、何て言ったらいいか言葉に表せない。申し訳ない」と謝罪し、「お前どこでどうなっちゃったの?っていうかもしれないね、会ったら。信じられないですよ」と驚きを隠せない様子で語った。近隣住民は岡庭について「真面目。(登校グループの)班長さんやっていて、そんなことする子じゃない」と話した。

本人は後の供述で、中学時代からホラー映画などで女児や女性が苦しむシーンに性的興奮を覚え、自己満足のために猫を殺すようになったとしている。自宅で小動物捕獲用のケージを仕掛けたり、素手で尻尾をつかんだりして捕獲し、千枚通しで刺した上、ケージごと土中に生き埋めにしたり、地面に叩きつけた上、金槌で殴打して殺害していたという。

千葉商科大学付属高校の商業科へ進学。ゲームをきっかけにナイフに興味を覚え、父親に頼んでインターネットで購入してもらい20数本ものコレクションがあった(事件では用いられていないが、所持が禁じられているダガーナイフも押収された。ダガーナイフは、2008年に起きた秋葉原無差別殺傷事件で凶器に使用され、翌年施行の改正銃刀法により自宅保管も禁止された)。

1年生の後半になると、同級生にメールで猫の虐待動画アドレスを送りつけたり、「護身用」と称してナイフやスタンガンを校内で見せびらかして「知らない人に使ってみようかな」などと話しており、クラスでやや孤立した存在になっていった。インターネットで人が切り殺される映像を見ていても、両親から制限されることはなかったとされ、「人を殺せばもっと性的な興奮や満足感が得られると思った。刃物を持って女子小中学生を尾行した」と述べている。2011年の春、小中学校の同級生が松戸市で開かれたカードゲーム大会で岡庭に再会したが、レアカードをファイル1冊分持っていたのが印象に残った程度で「目立つタイプではなかった」と話す。

10月、三郷市内にあるマンション駐車場でバイクが炎上する火災が発生し、友人に現場写真を見せて自分の犯行だと話していた。2011年11月1日、瓶詰めにした猫の首切り遺体を教室に持ち込むトラブルを起こす。2日に職員が説明を求めると「おもちゃだ」と答えたが、7日、母親と学校を訪れ、退学して進路変更することを担任に伝え、15日に学校に退学届けが郵送された。退学後は通信制高校に転入していた。

■公判

2013年2月19日から開かれた公判で、岡庭は起訴内容を認め、検察側は刑事処分が相当として懲役5年以上10年以下の不定期刑を求刑、弁護側は医療少年院送致の保護処分を求めて争われた。逮捕後に行われた精神鑑定で、広汎性発達障害と診断されている。

被害に遭った三郷の女子生徒は右目が思うように開かず頭痛に悩まされており、「昼でも夜でも一人になるのが怖い」といった被害による後遺症を明かした。また事件当時「襲われて悲鳴を上げると、口元を歪めて笑っているように見えた」と言い、「自分が死ななかったから犯人は満足できず、次の事件を起こしたのではないか。女の子(松戸の小2女児被害者)に申し訳なかった」といった供述さえあった。

また検察によれば、岡庭が犯行に使った包丁を舐めていたとみられること、殺害目的がなかなか達成できない鬱憤を放火で紛らわせ、更には放火の様子を友人に撮影させる等、事件前後の異常行動が指摘されている。岡庭本人は、事件前にも別の女子中学生を包丁で刺そうと、埼玉・千葉・東京を自転車で徘徊していたと供述。女子学生に悲鳴をあげられて逃げ出したこともあったという。三郷市の事件後、自宅のパソコンで検索し、「血が出たときを思い出して性的に興奮した。またやりたくなった」とも供述。弟に自身の犯行だと話したが、冗談だと思われ相手にされなかったという。学校に猫の瓶詰めを持っていった理由については「仲間が欲しかった。喜ぶかと思った」と説明している。

2013年3月12日、さいたま地裁(田村真裁判長)は「強い殺意に基づく凶悪で、計画的に行われた通り魔的犯行」と事件の重大性を指摘。求刑は懲役5年以上10年以下の不定期刑とされていたが、広汎性発達障害の影響と両親の養育環境が動機につながったとして刑事処分を退け、「医療少年院で長期間にわたって矯正教育を施し、保護観察所に両親の監護態度を改善させるのが最良」「再犯を防止する社会の要請にも適う」との判断から、家裁への移送を決定。精神科医との関わり合いによって閉ざされた心の窓を開くことが必要だとし、最後に「罰を受けないで済んだと間違わないでほしい。医療少年院に長く入ることになる。重い罰だ。君は変わる必要がある、変わらないといけない」「君が社会に受け容れてもらえる人間に変わって戻ってくることを願う」と語りかけた。

埼玉家裁は岡庭を2週間の観護措置とした。

時期は不明だが、その後、下の名前を「由征」に改名したとされている。

 

■関与の可能性

記事にあった「GPS情報」以外にも相応の状況証拠があって今回の逮捕へと至ったはずだが、個人的な見解としては、岡庭は境町一家四人殺傷事件には関連していないのではないかと思う。

 

第一に、既述の通り、三郷市と境町ではやや距離が離れていること。もちろん地元での再犯というのはさすがに躊躇するであろうし、県境を越えて初動捜査を掻い潜る越境犯罪を狙った可能性は考えられる。車やバイクであれば行き来に苦はない距離ではあるが、三郷市を中心に考えるとあえて境町にまで足を伸ばすだろうかと疑問に思う。利根川を越えて茨城県での犯行を狙うにしても守谷市坂東市の方が近場であり、利根川近郊の農村地域には孤立した家は比較的見つかるものである。

 

第二に、境町の事件は「個人」というより「家」を狙った犯行に見える点。岡庭が過去に起こした通り魔事件の動機は少女に対する暴行による性的興奮であった。「通り魔事件」ではあるが、池袋通り魔事件(1999)や土浦連続通り魔事件(2008)のような人生に絶望し自暴自棄になった末の道連れ的大量殺人、老若男女問わず「誰でもよかった」ケースとは明確に異なり、自分よりも若くて非力な女性を狙った「性犯罪」と見なすことができる。共に「殺人未遂」に留まっており、このとき最後まで殺害を遂行したかったが未遂に終わったのか、あるいは恐れおののく表情や悲鳴で満足して去ったのかは分からない。ペドフィリアか否かは医師ではないので断定できないが、事件当時16歳だったことや猫殺しやバイク放火といった前歴から考えると、反撃されるリスクが小さい「少女たち」をターゲットにしたように思われる。

小林家の当時小学生だった次女は、かつての岡庭であれば標的にしてもおかしくない対象かもしれない。だが少女を目当てに、寝ているとはいえ家族全員が揃っている自宅を襲撃するという発想はありうるのだろうか。岡庭も十代の頃より体力はついていようと思うが、もし女児を狙うのであれば、両親(子が小学生であればそれほど高齢とは考えづらい)を惨殺してまでもというよりは、やはり一人歩きのときや自分に有利なタイミング等を狙うのが筋ではないか。

 

 第三に、境町事件の長期化である。事件発生当初から情報提供のなさが危ぶまれており、すでに13か月以上も大きな進展が見られない。捜査対象範囲の拡大や懸賞金が設けられるなど一刻も早い進展が望まれながらも難航している。「事件当日、現場周辺にいたGPS記録」がどれほど近くだったのかは分からないが、おそらくは茨城・千葉・埼玉で前科のある者について相当数サーチをかけ、「刃物」「小学生女児」といった関連項からマークしたものと考えられる。要は、それだけ実行につながる証拠の洗い出しが困難なための別件逮捕という印象を受けるのだ。

マスコミの印象操作、捜査のポージングといった疑いも拭いきれないではないが、今後の進捗に期待したい。

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〈2021年1月6日追記〉

2021年1月4日『Fridayデジタル』に類報があったので、前掲の『週刊現代』記事と比較して確認したい。

friday.kodansha.co.jp

『現代』記事では「茨城で起きたある重大殺傷事件」と明記を避けていたが、こちらの記事では、事件名を銘打っており、送検の際に「各社のカメラマンが殺到した」ことからも内々には境町事件の別件逮捕と認識されていたことが窺える。

「別件は微罪にもかかわらず、Aは長期にわたって身柄を拘束され、念入りに取り調べを受けています。警察当局はAの商品購入履歴の情報や防犯カメラの画像解析によって、いくつかの状況証拠を得ているようです。ただし、ガサが入ったAの自宅から凶器など決定的な証拠は見つかっておらず、またAにつながるDNAや指紋も茨城の事件現場には残っていません。

有力な目撃者は当時13歳だった長男ですが、事件のショックが大きく、面通しは難しいでしょう。結局、Aの供述を引き出すしかないのが現状です」(全国紙担当者)

 『現代』記事では警察当局は「現場周辺にいたというGPS記録」を持っていることが伝えられたが、こちらの記事では、「商品購入履歴の情報や防犯カメラの画像解析によって、いくつかの状況証拠を得ている」と報じている。

境町の現場周辺は中心街から離れた農村地帯で、商業施設は非常に少ない。最寄りのコンビニエンスストアですらおよそ3㎞、徒歩30分ほどの距離がある。大型スーパーマーケットは境大橋付近の市街地まで出るか、坂東市岩井まで南下するか、いずれにせよ7㎞前後、車で15分程度かかる。記事に店や商品の詳細はないが、個人商店の類は省くことができるだろう。たとえば境大橋付近の大型小売店やホームセンターなどで(コロナ禍前の)事件当時に黒っぽいマスク、催涙スプレー、刃物を購入したとすれば有力な判断材料といえるかもしれない。だが「黒い帽子を購入した」だけであるとか、最寄りのコンビニで軽食を買い食いしていた程度であれば、とても状況証拠とはいいがたい。

 

もし仮に岡庭が関与しているとすれば、三郷市と境町という生活圏とはいえない距離に住みながら、どのように小林家と接点を持ちうるかという点についていくつか検討してみたい。

①小林さん一家が境町に引っ越してくる前に接点があった可能性。祖父が亡くなり小林さん一家が境町に越してきたのが事件のおよそ10年前の2009年頃。それまで光則さんは埼玉県のご実家でクリーニング店を営んでいたと報道されている。詳細な所在地は不明だが、境町よりは三郷市に近かったと考えられる。だが2009年時点で岡庭は14、15歳、小林さん一家は光則さんが30歳代後半、美和さんが40歳前後、長女が小学生、次女は乳児で、クリーニング店という業種からも、よほど近隣かなじみでなければやはり接点は見出しにくいかと思う。さらに10年前のことを(例えば何か恨みがあったなどで)記憶していたとして現住所にたどり着くことも考えにくいだろう。

②釣り堀客としてへら鮒センターに通っていた可能性。釣り人であればホームとなる釣り場以外にも“遠征”に出掛けることは少なくない。たとえばそこで小林さんの家人とトラブルになった、あるいは次女に接触を図るなどといったことがあれば、小林さんが敷地にロープを張る理由としても妥当に思われる。だが境町事件のエントリでも述べた通り、“ヘラ師”は年齢層が高いため、20歳代の岡庭が何度か通えば受付や利用者に顔がさすと考えられる。そうした証言を得ていたのかは不明だが、GPS記録などが「近くを車で移動した」程度のものではなく「度々釣り堀に訪れていた」「夕方の閉業後もずっと留まっていた」などを示すようなものであれば警察が疑いの目を向けることにも多少納得がいく。

③長女との接点があった可能性。大学生の長女がバイトなどをしていたかは不明だが、車と電車を日常的に利用していたことから、デートや買い物で県外の大型ショッピング施設など人が集まる場所へ足を伸ばす機会はあったであろう。事情はさておくとしても、行動範囲の広さや年代から見ると、一家の中では長女が最も接点を持つ可能性が高いようにも思える。

④あえて接点がない家を狙った犯行の場合。快楽殺人であれば、捜査を攪乱させるために、あえて過去に接点のない相手を狙って凶行に及ぶといった可能性もゼロとは言い切れない。犯人は夫婦を襲った後、子ども部屋へ行き、長男と次女は殺害に及ばず立ち去っている。目的が小林さんご夫婦(あるいはいずれか)の殺害にあったとすると、電気を点けて「目出し」状態とはいえ顔を晒しておきながら子どもたちの殺害に及ばなかった点は境町事件で最も不可解ともとれる行動である。これについては、以前から長女または次女を暴行あるいは誘拐するつもりだった(がサイレンの音で断念した)とする説などがある。

境町の事件は周到な計画性や証拠を残さない実行力などから累犯者へと視野を広げ、県を跨いでの合同捜査に踏み切ったものと思うが、さすがに事件発生から1年以上経ってしまった今、凶器が出てこようはずもなく新たな物証を得るのも難しい。しかしまかり間違っても自白強要や冤罪があってはならない。面通しが困難とされる現状、警察の草の根の捜査力が試されている。

 

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〔2021年2月22日追記〕

215日、茨城新聞で「警察手帳の記章偽造容疑で男逮捕 境署」の報。記事では、「警察手帳の記章に酷似した記章計3個」を偽造したとして、境署と県警捜査1課は15日に「埼玉県三郷市、無職、男(26)」を逮捕したと伝えられた。

 

16日、この逮捕を待ち構えていたかのように『週刊女性2021329日号』でノンフィクションライター・水谷竹秀氏の記事が公開された。

www.jprime.jp

気になった点は以下。

・近隣住民は、人となりについて「本人を見たことがないからわからないんです」と口にする

・通り魔事件で押収された刃物は計71本

・茨城の事件と何らかの関係があるかもしれないという情報は当初、警察庁から漏れたもの。逮捕時は茨城県警署員が1人同行

・小林光則さんは境町に引っ越した当初は埼玉県にある実家のクリーニング店に通っていた。場所が遠いため、茨城県内のゴミ処理施設へ転職

・「メディアが前のめりになって騒いだだけの印象」「一家とのつながりが全くない」(全国紙社会部記者)

・母親「びっくりしている」「(免許は)持っていません。息子は車を運転できないです」「(通り魔事件から)もう9年間、ほとんど外出していません」 

・容疑は警察手帳を偽造販売した疑い

 

さらに2月22日、同逮捕を受けて『デイリー新潮』でも記事が掲載された。

www.dailyshincho.jp

気になった点は以下。

・当初は殺人予備罪の容疑で家宅捜索されるとの情報があった(令状を取った段階では、爆弾を作るため薬物を大量購入しているとの情報を掴んでいた)

20日間の満期拘留後、消防法違反で起訴。2か月の起訴後拘留ののち、茨城県警に移送されて「自宅にニセ警察手帳があった容疑」で再逮捕

・でっち上げた訳ではないので違法性のある「別件逮捕」には当たらない。だが逮捕した容疑(硫黄・偽造)についての聴取を行いながら、遠回しに「別の事件」について聴いていた可能性はある

・県警への移送は本格的に聴取を行う狙いがあるかもしれない

 

 再逮捕の容疑は、「警察手帳の記章」を偽造した咎によるものとされ、下の様な公記号偽造罪(3年以下の懲役)に当たると考えられる。

www.bengo4.com

www.sankei.com

どれほど「酷似」していたのかは疑問だが、女性記事では「偽造販売」とされていることから自身で警察官になりすまして悪用しようとしていたのではなく、ゲームキャラクターなどのコスプレ用小道具として販売していたと考えられる。犯罪は犯罪だが、旭日記章でも海外の警察手帳でもなんとなくそれっぽいレプリカ品はいくらでも流通しており、やはり別件・・・ではなく重箱の隅をつついたような印象を受ける。

硫黄逮捕時に無職だったことや記事中の母親へのインタビューの様子からも、おそらくは昼の勤めに就くことなくほとんどを自宅で過ごしていたと考えられ、趣味を生かしてグッズ製作でもしていたように思えてならない。

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硫黄逮捕時から「爆弾」の話は聞かれたが、茨城県警はどういった経緯でこの情報を掴んだのか、そしてそもそも爆弾と境町の事件がどうつながったのか見当がつかない。母親が語るように周囲から訝しむ向きが続いていたのであれば、ホームセンターや農協のような場所で家人が「硫黄」と書かれた袋を3つ4つ買っているのを偶然見掛け、「大量の硫黄、ほかにも色々・・・もしや爆弾!?」といった発想につながり、地域内で話が膨らんでいき通報された可能性はないか(ないと思う)。あるいはネット注文でそれらしき大量購入履歴が発見されていたのか。

女性記事にあるよう、免許不所持とすれば行動範囲は限られる。三郷市鷹野から境町の現場まで自転車だと2時間以上の道のりである。雨降る深夜の農村落のはずれ、土地勘のない者ならば数百メートルと離れない間にスマホのナビに頼るであろう場所だがはたしてGPS記録はどこで反応していたのか。それとももっと容易に現場へのアクセスが可能な「別の人物」とつながりがあると見込んでいるのか。

続報を待ちたい。