食の都庄内で膨れる

「食の都庄内」

庄内の地を訪れ、いくつかの人気店に足を運べばこのキャッチコピーが脳裏に深く刻まれる。
美味いのは勿論のこと、山・海・川・平野あらゆる風土がまさにその食材を育むに適しており、この土地にしかない味を私たちに届けてくれていることを実感する。ナチュラルボーンご当地食なのである。

庄内食材のパワーを全国区に至らしめたイタリアンシェフ奥田政行さんのアル・ケッチャーノを訪れることは今回叶わなかったが、いくつかのお店で美味しいものにありつくことができた。



やさいの荘の家庭料理 菜ぁ

農家民宿と家庭料理のお店。
いい意味で、この地域のどこにでもある家庭料理が定食プライスで頂けるため、旅人には頓にうれしい。
ランチのメインはその日のお肉、お魚数種類の中からセレクトでき、写真のように両方選ぶこともできる。

(豚肉とりんごの組み合わせは鉄板として…)
魚介ものにおそろしく疎い私は、メニューに表記された「カレイ」と「口細ガレイ」に戸惑う。
(な!なにがどう違うんや・・・)
可愛い店員さんを呼び止める。
「カレイは白身魚で…」
私が知りたかったことは可愛い店員さんに半分も伝わらず、熱心に説明してくれた果てに「この辺りでは、カレイをよく食べます」ということがよく分かり、物は試しと口細ガレイを注文した。
素焼きと思しきそれは実にあっさりとして、「美味い!ムッヒー」というより「はふぅ、おいし」。これなら朝からぺろりといけるだろう。食べ進めるに、御汁も小皿も確たる味付けを極力排し、澄んだ素材の味を堪能できる繊細さ。日ごろ、どれほど味付けに労し、“メシ”を食べるための“おかず”を必要としているのか、その食生活の貧しさに恥じらいを覚える。
化粧など施さずともその人を愛せ。味ではなく素材に学べ。調理する側も、食べる側も覚悟を新たにすべきなのだ。

「もし遠方から友達が遊びに来たとして、友達を喜ばせるのにどこ連れていきます?」
「彼氏にドタキャンされて休みが暇になっちゃったとき、どこ行きます?」というような回りくどい質問で、地元人から情報を仕入れる。
「え、どこだろう…羽黒山とか観光地じゃなくてですよね…」と可愛い店員さんを困らせることを食後のデザートにするつもりはなかった。しかし慌ててタウン誌など広げてあれやこれや奔走してくれる姿はとてつもなくキュートだ。
「イオンとか…じゃないですよね。最近どこにもゆっくり遊びに行けてないんですよね、こども2人居るんで」

こんなキュートな二児の母とか・・・最高かよ。
素材に素直に作った料理は、身も心もきれいにしてくれるような気がする。だが下心は別腹なのかもしれない。



穂波街道 緑のイスキア
真のナポリピッツァ協会認定店296、言わずと知れた人気店。
そのコンセプトは、「種を蒔くことから始まるレストラン」。
メニューには定番ピッツァに加え、キノコや庄内野菜などご当地食材が名を連ねる。
「旬のお野菜のメニューをご注文いただき、ありがとうございます」

陽春のイタリアの味、お店の菜園のイタリア野菜「プンタレッラ」のサラダ。
甘酸っぱいオイルでさっぱりと。クリュンクリュンになったプンタテッラの歯ごたえは愉快な音楽のよう。瑞々しい香ばしさに思わず体が弾む。ボウル2杯くらいイケそう(無謀)。

だだちゃ豆とプンタテッラ、自家製サルシッチャのピッツァ(L)。
ピッツァも実は小ぶりにできなくはない、と教えてくれたが、私のおなかは(L)をおすすめ。
豆の甘味とサルシッチャの塩気、ぽってりしたピザ生地とプンタテッラの歯ざわり。
まるで昔から変わらず愛され続ける定番ピッツァのように完成されている。

カウンター席だったので話をすると、我が家から数百メートルの真のナポリピッツァ協会認定店とも交流があるとのこと。県内では屈指のお店で、自家菜園もある。だが緑のイスキアには、庄内の食材と、研究熱心なピッツァヨーロ達がこの店にしかないピッツァ、この店でしか味わえない味がある。庄内っ子たちは幸せだ。



生石 大松家
上の2店は、ともに鶴岡市街から車で10〜15分ほど、“街はずれ”ではあるがアクセスはよい。
大松家は、酒田市街から車で30分、鷹尾山の山村にひっそりと佇む。
はっきりいえば辺鄙、にも拘わらず、人々はこの店を目指して集まってくる。







↑ちょうど孟宗汁シーズン。味噌と酒粕のこってりした甘じょっぱさ、岩海苔の香りと相まって絶品でした。

山形に美味い蕎麦屋は無数にある。しかし庄屋と思しき大豪邸の古民家で、厨房から座敷まで10m以上距離があり、店員さんたちにとっては手ごわいものと思われるが、各々が囲炉裏を囲んで団らん、という雰囲気は掛け値なし、唯一無二である。※相席もある。
メニュー構成も、蕎麦、田楽、お肉(写真)、里山料理、とコース以外にも多様にあり、再来を誓わせる。
私が訪れた日は酒田の祭りだったこともあり、バイクライダーや観光客に加え、地元に帰ってきた親類一同のような方々も多く、大行列を成していた。私は飲まないが地酒も各種揃えてあり、昼間から宴会モードのおじちゃんたちもいたりして賑わっていた。
「小さいお子さんいるから廊下に近い方の席でご用意しました」
人気店だけあって配膳を取り仕切る店員さんも見事なオペレーション。
ちなみに「HP見ました」で平日のみとはいえ抹茶サービスまでしているから感心する。この店に一度来たら、この店にしかない魅力で存分にリピーターにさせるつもりでいる。店員さんと会話の暇はなかったが、混雑にも不遇を感じさせないサービスに感服であった。