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宇田川敬介『震災後の不思議な話』文庫版感想

未曽有の大災害から10年が経った。行き過ぎた「自主規制」の弊害か、「不謹慎」警察の横行か、震災や原発を巡る報道は「風化」し、やや画一的にさえ感じられるようになった。招致時には「復興五輪」などとも言われたというのに、コロナ禍は世の中をフラッ…

【つけびの村】山口県周南市連続殺人放火事件について

2013年に山口県周南市にある山間の集落で発生した連続殺人・連続放火事件について、すでに犯人が逮捕され死刑が確定した事案だが、風化阻止の目的で概要や所感等を記す。 また本件を主題とした高橋ユキ氏によるルポ『つけびの村』のレビューも付記する。…

長谷川博一『殺人者はいかに誕生したか「十大凶悪事件」を獄中対話で読み解く』感想

凶悪犯の心理については古今を問わず多くの耳目を集め、人物の特異性や犯行の猟奇性がクローズアップされて語り継がれる。コメンテーターたちはセンセーショナルに煽り立てた挙句「闇の深い事件です」「許されることではありません」とラベリングしてやがて…

『向日葵の咲かない夏』感想

向日葵の咲かない夏 (新潮文庫)作者:秀介, 道尾新潮社Amazon「幻想はいともたやすく現実に紛れ込む」と解説にある通り、そして生まれ変わったS君が冒頭から何度も指南するように、「思い込みは禁物」なのだ。古今の歴史が示すところによれば、あらゆる物語に…

コーマック・マッカーシー『ザ・ロード』感想

ザ・ロード作者:コーマック・マッカーシー早川書房Amazonいい夢しか見られなくなったら余程不幸せだといえるだろう。物語では、串刺しにされ焼かれた乳児の姿や街の荒廃ぶりが徹底して写実的に描かれている。 われわれ読者は普段本の世界から感じる"におい"…

手塚治虫『アドルフに告ぐ』レビュー

アドルフに告ぐ (1) (文春文庫)作者:手塚 治虫文藝春秋Amazon ユダヤ人はネーションステイトの誕生以前から国亡き民として存在し、およそ政治的・文化的・宗教的・アイデンティフィケーションのうえで選択される(あるいは選択させられた)社会集合(エスニ…

漫画『残酷な神が支配する』感想

残酷な神が支配する (1) (小学館文庫 はA 31)作者:萩尾 望都小学館Amazonつながりは鎖のように、ときに人を救い、ときにきつく肉を締め上げる。人の愛のつながりはタフにできてはいない。「過剰な愛は少しでも理想や夢と違うことが起きるとき耐えられない」…

杉浦日向子『二つ枕』感想

二つ枕 (ちくま文庫 す 2-10)作者:杉浦 日向子筑摩書房Amazon江戸文化風俗の語り部、杉浦日向子。 1982年ガロ登場以来、時代考証にもとづく情念豊かな"江戸もの"を数多く著したが、研究に専念するため惜しまれつつ断筆。2005年没。 タイトル『二つ枕』はガロ…

『人間ども集まれ』感想

人間ども集まれ!作者:手塚 治虫実業之日本社Amazon男と女の中間ではなく、男でも女でもない第三の性、無性人間。彼らは人間に代わって戦争をするために生産された。しかし父子の情、性に対する劣等感と嫉妬、劣悪な労働状況に対する抵抗が生じ、ついに無性人…

辰巳ヨシヒロ『劇画漂流』感想

1950年代後半、“劇画宣言”を提唱した辰巳ヨシヒロによる半自伝劇画。 なぜ“劇画誕生”ではなく“劇画漂流”なのか、が本作の妙味でもある。 劇画漂流 上巻 作者: 辰巳ヨシヒロ 出版社/メーカー: 青林工藝舎 発売日: 2008/11/20 メディア: コミック 購入: 3人 ク…

『蟇の血』マンガ・近藤ようこ×原作・田中貢太郎

蟇の血 (ビームコミックス)作者: 近藤ようこ,田中貢太郎出版社/メーカー: KADOKAWA発売日: 2018/02/10メディア: コミックこの商品を含むブログ (2件) を見るこういうマンガが読みたかった!怪談文芸の祖・田中貢太郎の傑作を、偉才・近藤ようこが鮮烈に視覚…

狩撫麻礼、谷口ジロー『青の戦士』感想

狩撫麻礼原作×谷口ジロー画、1980−81年ビッグコミックスピリッツ連載のアウトローボクシング劇画。青の戦士 (アクションコミックス)作者:谷口ジロー,狩撫麻礼発売日: 2016/02/15メディア: Kindle版 ライト級ボクサー・礼桂(レゲ)、戦績は32戦12勝20敗。 全て…

ジョージ秋山『アシュラ』感想

1970ー1971週刊少年マガジン掲載、同時期、週刊少年サンデーに連載された代表作『銭ゲバ』のアナザー・ストーリー、根源ともいえる鬼才・ジョージ秋山による衝撃作。アシュラ (上) (幻冬舎文庫 (し-20-2))作者:ジョージ秋山発売日: 2006/02/01メディア: 文庫…